2012年10月22日

「 虹絵 」

鑑賞日 : 2008年12月29日(月)
映画館 : ブリリア・ショートショート・シアター
プログラム : 観客ベストショート 1。

英題 : Printed Rainbow
邦題 : 虹絵
監督 : Gitanjall Rao
製作国 : インド
製作年 : 2006年
上映時間 : 15分14秒
種別 : アニメーション
フライヤーの説明 : 小さなアパートの一室。
一人の老女と一匹の猫。

おばあさんは秘密の窓を持っている ー それは、色とりどりのマッチ箱のコレクション。

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この作品を初めて見たのが、2008年12月29日。
その後 2012年迄の間にこの作品を4回か5回見ました。
初めて見た時は、さして感動しませんでした。
まだショートフィルムを見始めたばかりの時期で、長編映画には無いスピードとブラックユーモアのオチを期待していたからです。
短編映画ながらインド悠久の5000年の歴史を見せてくれるリズムの映画です。
ニヘドンも年を取って来たと言う事でしょうか。
この作品を見る度に、どんどん感動が沸き起こって来て、2012年10月に見た時は、涙が溢れて来ました。
この作品は「 SSFF&ASIA 2007 」でグランプリを受賞しました。
今のニヘドンなら、やはりこの作品に1票を投じるでしょう。
最初は画面が白黒なのですが、おばさんの夢の中は極彩色なのです。
現実がモノトーンで、夢の世界がカラフル。
深い短編映画なんです。

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ストーリーの概要。
暗闇中で雨の音が響く。
画面が切り替わり、白い高層ビルの群れが見える。
車のクラクションの音がアンサンブルを奏でる。

アパートの部屋の中に猫とおばあちゃん。

おばあちゃんは猫の皿に魚を1匹投げてやる。
おばあちゃんはコーヒーカップに飲み物を注ぎ、別の部屋に行く。
他のアパートの、それぞれの部屋の中の様子が描写される。
おばあちゃんが高層アパートの窓から下を見下ろすと、道路には車がひっきりなしに行き交っている。

急に大粒の雨が降り始める。
慌てベランダの洗濯物を取り込むおばあちゃん。
おばあちゃんは引き出しからマッチの小箱がギッシリ詰まった箱を取り出す。
おばあちゃんが1つのマッチ箱を指でつまんで取り出し、箱に描かれたイラストをじっと見詰める。
すると、おばあちゃんはイラストの世界に入り込んでしまう。

ここから画面はカラー。
ジャングルの川の上で、のんびりボートの船旅をするおばあちゃん。

おばあちゃんは次に「 PALACE 」と書かれたマッチのイラストをじっと見る。
夜、静まり返った中に虫の音が聞こえる。
宮殿の或る部屋では民族衣装の女達が集まり、歌と踊りを繰り広げている。
それを見たおばあちゃんは嬉しそうに目を細める。
おばあちゃんは大浴場に出る。
女性が小さな器の中に火を灯したのを5つお盆に乗せ、川へ通じる石段の上に置く。
おばあちゃんは、その灯りを1つ1つ川に流して行く。

お盆の上に置かれたマッチにはトラックの絵が描かれている。
今度はイラストの世界の中で、おばあちゃんがトラックを運転する。
ピンポンと言う呼び鈴の音がしておばあちゃんは現実の世界に戻る。

画面は白黒になる。
友達のおじいちゃんが飼い犬と一緒に遊びに来たのだ。
おじいちゃんは肩より長い白髪のロン毛。
眼鏡を掛け、哲学者の風貌。
孤高の詩人ロッカー高井つよし氏が80歳を越えたら、こんな感じになるのではないかしら?(笑)

おじいちゃんは手に持った手紙の封を開ける。
中からはトラックの絵のマッチ箱が出て来た。
おばあちゃんは自分のトラックのイラストのマッチをおじいちゃんのマッチに並べて置く。
二人はじっとイラストに見入る。

次の日も1日雨が降り込めている。
おばあちゃんは又マッチの箱を引き出しから取り出し、空っぽになった引き出しの中に潜り込んでいた猫を抱き抱えて外に出す。
おばあちゃんは猫と一緒に虹が描かれた世界へ入り込む。
おばあちゃんはイラストの農村の世界で木の実を取り、大木に掛かったブランコに乗り、野原で遊ぶ。

呼び鈴が鳴る。
ピンポン!
……………ピンポン!
…………………ピンポン!!
おじいちゃんが遊びに来たのであるが、おばあちゃんは揺り椅子の上で眠っていて返事をしない。

おじいちゃんは軽くドアを押すとドアが開いたので、部屋の中に入って行く。
おじいちゃんはおばあちゃんの手首を見る。
おばあちゃんの左手にはマッチがしっかりと握られ、マッチ箱のイラストの中でおばあちゃんと猫が生きていた。
おじいちゃんは眼鏡を上げてマッチ箱を目に近付けてよく見る。
イラストの中からおばあちゃんが手を振っている。
それに気付いたおじいちゃんは満足気な顔をして部屋を出て行く。

暗闇の中で鳥の囀ずりが聞こえる。
エンドロール。
「 母と飼い猫に捧げる 」

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おばあちゃんはでっぷりと太り、何部屋も有る高層マンションで独り暮らしをしているのですから、裕福な人間なのだと思います。
状況から言うと、孤独死なんですが、日本の老人の孤独死の様な悲惨さは有りません。
ヒンズー教の来世で幸せになると言う考え方のせいでしょうか。
今を満足して生きているからでしょうか。
死は決して虚しい事では無い。
死は来世の始まりであると言う達観は、日本人も参考にした方が良いかもしれませんね。

宮殿のシーンのエキゾチズムにはゾクゾクします。
名作です。
見れば見る程好きになる作品です。



Posted by ニヘドン at 20:19│Comments(0)
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